やっと落ち着いて自分の時間がもてるようになりました。
9月に「マツコの知らない世界」にゲストとして出演させていただいてから、様々な方々とのご縁をいただき、
大変ありがたく、嬉しく思います。
その一方で畑の管理から出荷作業、来客の対応など基本的に当方一人で行っていたため、十分に対応できず、失礼があったことを申し訳なく思っています。
皆様との出会いのなかで、沢山の気付きがありました。
それを今後の活動に生かし、いま私ができることに精一杯取り組み、みなさんと情報を共有していくことが、私のできる恩返しだと思い、この記事を書いております。
林ぶどう研究所としてスタートし、もう少しで2年になりますが、一農家が研究所と名乗ることに、大きな葛藤がありました。
ただ、育種をしているという特異性と、その活動の継続するという決意
ブログの初回に、何故研究所なのか、私の想いをお伝えできればと思います。
研究所としてスタートしたのは、ぶどうについての様々な提案をしていこうと思ったからです。
その提案とは
1,品種の提案
2,加工の提案
3,シーンの提案
です。
まず、私の一番重要だと感じている「品種」についてお話していきます。
品種を語る上で、私の考え方の軸になっている言葉があります。
その言葉は
「品種に勝る技術なし」
です。
育種を始めた当時、その意味はよく分かりませんでした。
しかし、今はその意味がよくわかります。
まず、私が農業を始めた20年前、岡山の南部地域では「マスカット オブ アレキサンドリア」(以下マスカットと省略)が多く栽培されていました。
香、味、外観と大変優れた品種ですが、栽培が難しく生産量の95%以上が岡山で作られている品種です。
しかし現在では、多くの農家がマスカットの栽培を減らし、シャインマスカットを栽培しています。
なぜ、マスカットが減り、シャインマスカットが増えて来ているのか、そこには幾つかの理由があります。
その中でも大きな要因は、消費者の嗜好性の変化です。
いわゆる、「種無し」、「皮ごと」といった物が消費者に求められるようになったからです。
私が農業を始めた頃は、種ありの品種が殆どで、種無しの品種のほうが少ない状況でした。
しかし今では、ほとんどの品種が種無し、皮ごとになっています。
わずか20年の間に、こんなに大きな変化がありました。
他にも、環境の変化や、栽培が容易という特性もシャインマスカットに変わった理由でもあります。
私が、育種を続けている意味はそこにあるのです。
生産者は常に、良いものを作るべく、栽培技術を磨き、安定させる努力をしています。
しかし同じ品種では、先程触れた要因のどれかか、または全てが原因で評価を得られなくなることが考えられます。
私は、品種を追求することにより、栽培現場の安定的な経営の継続を支え、新たな外観や味などの嗜好性にも対応出来る品種の育成を目指していきたいと考えています。
グローバル化の進む現在、国内生産されたもののみではなく、海外から輸入される物が益々増えてくると思います。
私の提案したい将来は、どのような状況になっても対応出来る準備を、生産者だけでなく、消費者も交えた形で行っていくことが重要だと思っています。
生産者は、消費者に食べてもらうことで、
消費者は、生産者が作ってくれることで、
循環する形で成り立っているからです。
畑で、見学、栽培をしてみると、農業において「品種」というツールがいかに重要なものであるか、より理解できると思います。
次回は、加工についての私の提案の話をしていきたいと思います。