本日は、加工の提案についてです。
日本では、昔から生食用のぶどうの栽培が主にされてきました。
もちろん加工用の品種の栽培もありましたが、生食用品種の加工や加工専用の品種の栽培量は全体から見て少なく、今も割合からいってまだまだ少ない状況です。
私はここで、果実を加工をすることで、
1,産地や生産者の所得向上
2、耕作放棄地の利用促進
3,果実の無駄のない消費
4,消費者の満足度をアップ
が可能になるのではと考えています。
先日上げた品種の嗜好性からも窺えるのですが、味・香といった部分に食べやすさや外観などの要素が消費者の満足度を上げています。
ここから先程あげた4つのポイントを踏まえた、私の考える加工の方向性として、2つの提案をしていきたいと思います。
提案①
加工を前提としたぶどうの栽培です。
私のイメージですが、今までの加工は生食品種を栽培中に上手くいかなかったものや、生食前提で作ったものを転用する形だったと思います。
そうなってくると、当然生食前提のコストがかかっていますから、販売単価も高くなってきます。
そこに、加工のコストも乗せていくと、商品単価が高くなるか、仕入れ果実の価格の生産者と業者との間での感覚の差が生まれていると感じていました。
そこで、これからの加工用の果実は、加工品を作ることを前提に生産していく必要があると思っています。
その理由は、単価についてだけでなく、加工と生食では、望まれる果実の状態が違うからです。
例えば、果実の大きさ、糖度、凝縮度などです。
条件を満たすことによって、生産者は手間を省け、業者は加工しやすい果実を妥当な単価で仕入れることが可能になり、より良い加工が可能になります。
また、果実を加工することで、保存期間を伸ばし、付加価値をつけることが可能になり、輸送も容易になります。
更に、年間を通じてぶどうを感じてもらうことができます。
これからは、季節には生果を、それ以外には加工品で、年間を通じてぶどうを楽しんでもらえる環境作りを目指したいと考えています。
さて、加工を前提としたぶどうというと皆さんはどのような品種を思い浮かべるでしょうか。
私は、まず最初に思い浮かべたのが醸造用品種です。
日本では、醸造用品種の栽培がないわけではありませんが、生食品種の醸造やヨーロッパで栽培されているような醸造用品種の栽培が比較的多い印象があり、まだまだ日本の環境にあった品種の栽培が確立されているわけではないと感じています。
そこで、昨年より醸造家の大岡弘武さんとの連携を行い、有機無農薬栽培の実現に向けた取り組みをスタートしました。
「日本の気候にあった、醸造用品種の育成」
前回の話にもありましたが、やはり品種特性に勝るものはありません。
他にも、加工というとジュースやレーズンなど加工品も多岐に渡ります。
提案②
特徴のある品種の加工です。
今後は、粒が非常に大きい、小さい、形が変わっている、裂果などが原因で通常生産しにくいといった品種でも、加工によって他の生産者と差別化し、付加価値をつけることが可能になっていくと考えています。
私は数年前から、裂果品種のレーズンへの加工に挑戦しております。
当初は、割れやすい品種に挑戦する際に、もし裂果が発生した場合、ただ諦めるといった現状を、加工する事で解決できないかと考えたのが始まりでした。
裂果は、フィンガータイプや大粒系、皮が薄く食べる際に気にならない品種に発生しやすい特徴で、天候や管理状況によって発生します。
皮が薄いことは、加工してもその特徴はしっかり残るので、レーズンにしても皮が気になりにくく食べやすいものに仕上がります。
また、割れていたほうが、乾燥が容易だったりします。
同じレーズンでも、より付加価値の高いものに仕上げることで、消費者の満足度を上げ、他の商品との差別化を図ることが可能になります。
今年は、ゴールドフィンガーのレーズンを作ってみました。
冬になって、落ち着いたころにご案内できればと準備をしています。
加工の道筋を作ることで、従来栽培が難しかった品種を生産することが可能になると考え、現状加工の方法などを、友人と検討しています。
さらに、加工を前提として栽培することで、比較的外観を気にしなくてもよくなり、専門的な技術の習得を必要としないため、人材の確保や育成も、従来より容易になると考えられます。
人材が増えれば、栽培面積も増え耕作放棄地の減少にも貢献できると考えます。
様々な加工方法が可能になることで、様々な品種の栽培、加工が進み、消費者が色々な品種を食べ、色々な料理でぶどうを楽しむ機会が増えると考えています。
今後グローバル化が進む中、高付加価値の商品を生み出し、様々な地域の方を楽しませることが出来るよう、様々な方法に挑戦したいと思います。